巻き爪は文字通り、爪が丸く湾曲してきたものです。その原因としては爪の両側から強い力が加わった場合(先端の細い靴を履いた場合、ハイヒールの着用など)や、爪が持ち上がるような状態になった場合(爪白癬などでは爪が肥厚するため持ち上がる)、体質的な要因などが挙げられています。単に丸くなっただけで普段の生活に何ら影響を及ぼさないことも多いですが、後述の陥入爪を合併することもあります。またロールケーキほど巻いてしまうと指の組織を巻き込むようになり、入浴時に疼痛が生じることもあります。
一方陥入爪とは爪の先端や側縁が周囲の組織に食い込み疼痛、炎症、感染、不良肉芽(ふりょうにくげ、赤い肉の塊のこと)の形成などを引き起こした状態です。原因としては爪の不適切な切り方(いわゆる深爪)によるものが圧倒的多数を占めます。爪を短く切りすぎると、歩いたとき足の指に指腹からかかる圧力により深爪のため爪の無くなった部分の組織が盛り上がります。そして盛り上がった組織に伸びてきた爪が刺さり陥入爪となります。その他に大きすぎる靴の着用により遊んでしまう指が靴にぶつかって起きる場合や、逆に小さすぎる靴による圧迫が原因になることもあります。どの指でも起こりえますが、治りにくく何度も繰り返して日常生活に支障が出てくるのは足の親指が多いです。
巻き爪の方が有名であるため、足の爪の辺りに痛みが生じてくると皆さん「巻き爪で・・・」と来られますが、実際には陥入爪で痛みが生じていることが多く、また両者が合併していることも珍しくありません。治療法が異なるため、症状や生活パターンなどから治療法を選ぶことが大切です。
基本は巻いてしまった爪をまっすぐに戻すということになります。いくつかの治療法がありますが、当院では形状記憶ワイヤー法と巻き爪マイスター、VHO(3TO)、コレクティオを行っています(いずれも保険適応外です。費用に関しては「 >> 診療費について」をご覧ください。なお巻き爪マイスターは >> ブログをご覧ください)。
形状記憶ワイヤー(マチワイヤー法) |
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利点としては上記の治療に痛みを伴わないこと、矯正力の強さのほか、費用の安さ、施術の容易さなどが挙げられます。欠点としては爪の先端部に穴を開けるため爪の長さがある程度ないと施術できないこと、先端部での矯正になるため根本までなかなか改善せず、それ故ワイヤーを外すと再び巻いてしまう割合が多いこと(約3割)矯正力が強すぎて爪が組織からはがれてきてしまう爪甲剥離の状態になりやすいことなどが挙げられます。 |
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VHO(3TO)、コレクティオ |
爪が組織に食い込んで痛みや不良肉芽の形成などを引き起こしているので、爪が食い込まないようにするのが治療の基本となります。テープ法(テープで固定して爪と組織の間を離す方法)、綿詰め法(食い込んでいる爪と組織の間に綿を詰め、隙間を生じさせる方法)、爪切り法(食い込んでいる爪を文字通り切ってしまう方法)、ガター法(食い込んでいる爪と組織の間に点滴チューブを挿入し、隙間を作る方法)などがあります。現在の症状と生活環(運動系のクラブ活動をしているかなど)を総合的に判断して治療方針を決めますので、ご相談ください。
近年テレビや雑誌などで爪白癬のことが取り上げられる機会が増え、「黄色く濁った爪は水虫だ」ということで、病院に来られる患者さんが大変増えました。しかし、爪は水虫だけが原因で黄色く分厚くなるわけではありません。尋常性(じんじょうせい)乾癬(かんせん)や掌蹠膿疱(しょうせきのうほう)症(しょう)、爪甲鉤弯症(そうこうこうわんしょう)、扁平苔癬(へんぺいたいせん)と呼ばれる疾患などでも爪は分厚くなります。これらの疾患に水虫の治療を行っても当然のことながら全く効果は得られません。それ故まず爪を削って顕微鏡で菌の要素を確認し、確実な診断をつけることが大切です。
爪白癬の治療でもっとも効果があるのは内服薬です。しかし内服薬は肝臓に負担をかけてしまう場合があるため、内服に際しては定期的な血液検査が必要です。また他科の薬を飲んでいる場合には内服できないこともありますので、診察時にご相談ください。内服ができない場合には、抗真菌剤を外用して治療することになります。
内服薬 |
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外用薬 |
皆さんは足の裏がかゆくなったとき、あるいは足の指の間がじゅくじゅくしてきたときどうされますか?水虫になってしまったから薬局で薬を買って塗ろう!!と考えませんか?実際にこのような症状では水虫であることが多いのですが、水虫以外の場合も結構あるのです。異汗性(いかんせい)湿疹(しっしん)や胼胝型(べんちがた)湿疹(しっしん)、掌蹠膿疱(しょうせきのうほう)症(しょう)などはしばしば水虫と非常に似た症状になるため、皮膚科専門医であってもみただけでは診断のつかないことがあります。従って顕微鏡を用いた真菌検査が不可欠になります。水虫の場合でもじゅくじゅくタイプのものにいきなり抗真菌剤を塗布すれば、かぶれてかえって悪化してしまうことがあるため、一度別の薬で乾燥させる場合もあります。
水虫の場合、お風呂で指の間まで石けんを使い丁寧に洗います。硬い布や軽石などでごしごし洗うと皮膚に傷がつき、細菌感染が起きてしまうので、出来るだけ優しく洗いましょう。お風呂をでたときの足ふきマットを経由して他の方に移してしまうので、自分専用のものを用意する方が良いです。みずむしの薬(抗真菌薬)は1日1回入浴後よく水気を取った後塗ります。足の指の間からかかとまでまんべんなく塗るようにしましょう。足の裏はみずむし菌の栄養となる角質が厚いため、完治させるためには最低3ヶ月は外用することが必要です。
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