帯状疱疹は子供の頃にかかった水痘(みずぼうそう)が原因です。水痘が治った後もその原因となったウイルスは体に残ります。体の中にある神経節と呼ばれる部分に潜伏感染していますが、普段は体の抵抗力で活動が抑えられています。しかし加齢や疲労、ストレス、病気など体の抵抗力が落ちると、潜んでいたウイルスが再度活動を始め(再活性化)、痛みを伴う水疱が体の一部に生じてきます。これを帯状疱疹(ヘルペス)と呼びます。
60代の方を中心に50~70代に多く見られますが、まれに幼児にも見られることがあります。一般的に季節による変動はないといわれますが、疲れのたまる夏の終わりやお正月明けに患者さんの増える傾向があります。
水痘が全身に水疱を認めるのに対し、帯状疱疹は神経の流れに沿って水疱が並びます。神経は背骨(脊髄)を左右に横向きに出発して腹部中央部分まで走っていますので、体幹部に生じた場合、体の右、もしくは左側どちらか一方に水疱が名前のごとく帯のような形で並びます。顔では片側の目が大きく腫れ上がり、四谷怪談の「お岩さん」状態になることもあります。手足では縦に水疱が並びます。
まず体の左右どちらか一方の部分に痛みが生じます。 |
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数日後痛みの部分が赤くなってきます。 |
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赤いところに水疱が生じてきます。 |
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やがてそれらはただれてびらんになります。 |
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そして黒いかさぶたが付着して治っていきます。 |
という経過をたどります。若い人の場合には痛いというより痒みを訴えるケースもあります。帯状疱疹の水疱は皮膚の深いところから出ているため、水痘と同様色素沈着やへこみなど跡の残ることがあります。
帯状疱疹の水疱は実は加療しなくても3週間ほどで跡を残し消失します。しかし加療せず自然治癒に任せた場合、帯状疱疹後神経痛という後遺症の残ることがあります。発症直後の痛みが炎症に伴うものであるのに対し、帯状疱疹後神経痛は神経そのものの損傷により生じる痛みであるため、通常の痛み止めがあまり効きません。また帯状疱疹後神経痛は症状が激しい場合には5~10年と長く残ることもあり、一度残ってしまうと現在の医学の技術では完全にはコントロールできません。従って帯状疱疹と診断がつけば即治療を開始し、帯状疱疹後神経痛を極力残さないようにする必要があります。
帯状疱疹は神経のところでウイルス(ヘルペスウイルス)が暴れ回り、神経を傷つけているため、
【1】抗ウイルス薬の内服 【2】神経を元気にするビタミン剤の内服 【3】皮膚をきれいにする外用剤の塗布が基本となります。症状によっては総合病院に入院の上、点滴などを行わねばならないこともあります。また帯状疱疹後神経痛が残ってしまった場合には、神経疼痛を和らげるような薬に切り替えていく必要があります。
無理をしない |
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患部は冷やさない |
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他の人に移りますか? |
口唇ヘルペスは、くちびるやその周りにちくちくするような違和感や痒みが出た後、軽い痛みを伴う水疱ができる病気です。主に1型単純ヘルペスウイルスの感染により発症します。初感染の時には口内炎が多数できたりくちびる周りにたくさんの水疱ができたり発熱を伴ったりすることがありますが、ほとんど症状の無い方もあります(不顕性感染)。20,30歳代では約半数、60歳以上ではほぼすべての人がウイルスを持っていると言われています。
以後体の抵抗力が落ちたときに症状が出ますが、再発の場合は狭い範囲に4,5個の水疱がかたまってできます。発熱時にしばしば見られるため、「熱のはな」とも呼ばれます。症状の出る頻度は数年に1回から1年に何度もという方まで様々です。
口唇ヘルペスの原因となる1型単純ヘルペスウイルスは、症状の出ている人の水疱や唾液等に接触することで感染します。またタオルやコップなどを経由してうつることもあります。一度ヘルペスウイルスが感染すると一生神経節に潜伏し続けます。普段は体の免疫の働きにより活動が抑えられていますが、疲れたときや発熱時、直射日光に強く当たったときなどにウイルスが活動を再開し(再活性化)、症状が出ます。
治療にはウイルスの増殖を抑える働きのある抗ウイルス薬の内服や外用を行います。抗ウイルス薬はウイルスをやっつけるのでは無く、増殖を抑える事で効果を発揮するため、効き始めるまでに3日程度かかります。従ってむずむずするような症状がで始めたらできるだけ早く治療を開始する必要があります。また水疱は皮膚の深いところから出てくるため、硬いかさぶたができることが多く、こじらせると色素沈着が長く残ります。内服薬を用いても潜伏しているウイルスを完全に排除することはできないため、以後の再発を完全に抑えることはできません。
性器ヘルペスは性器やその周囲、おしりに痛みや痒み、不快感などを伴う水疱ができる疾患です。主に2型単純ヘルペスウイルスの感染により発症します。初感染の時には性器周辺やおしりに多数の水疱ができたり、それらが大きくなって潰瘍になったり、発熱を伴ったりすることがあり、口唇ヘルペスの初感染時の症状より重症化することが多いです。ほとんど症状の無い方もあります(不顕性感染)。以後体にウイルスが潜伏感染し、疲労や発熱、ストレスなど体の免疫力が落ちると再発します。口唇ヘルペスと同じく再発の場合は狭い範囲に4,5個の水疱がかたまってでき、症状の出る頻度は数年に1回から1年に何度もという方まで様々です。
性器ヘルペスの原因となる2型単純ヘルペスウイルスは、症状の出ている人と性的に接触することで感染します。またウイルスの付着したタオルや便座などを介して感染することもあります。通常水疱などが出ているときに感染しますが、症状の無いときにも粘膜などからウイルスの排出の起きることがあるため(無症候性排泄)、注意が必要です。
口唇ヘルペスと同じく抗ウイルス薬の内服や外用を行います。やはりむずむずとした自覚症状が認められたらすぐに治療を開始する方が効果的です。内服を行っても神経節に潜伏するウイルスを完全には排除できませんので、以後の再発を完全には抑えられませんが、頻回に繰り返す人の場合には(年間6回以上)、再発抑制療法が有効です。これは通常の治療より少量の抗ウイルス薬を毎日内服し続けることで再発を抑えようというもので、保険適応となっています。この治療法であっても再発を100%抑制できる訳ではありませんが、再発回数が減少し、もし再発した場合でも症状が軽くすむ、病期も短くなる事がわかっています。また無症候性排泄が起きる日数も有意に減ることがわかっています(完全に無くなる訳ではありません)。
バスタオルなどを経由して感染することはありますが、お風呂に浸かってウイルスに感染することはほとんどありません。洗濯・乾燥によりウイルスは除去できます。また妊娠、出産も原則としては可能です。しかし分娩時に症状が出たり、分娩の1ヶ月前に初感染したりした場合には赤ちゃんに感染し、重い症状を引き起こすことがあります。詳しくは産婦人科の医師にご相談下さい。
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