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アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎とはABOUT

アトピー性皮膚炎は、良くなったり悪くなったりを繰り返す、かゆみを伴う湿疹を主な病変とする疾患です。ご自身やご家族が気管支炎やアレルギー性鼻炎、結膜炎、アトピー性皮膚炎などを持つことが多いです。

湿疹は左右対称に出ることが多いですが、年齢により好発部位は異なります。乳幼児期に発症して小児期に寛解する場合と、寛解することなく成人まで湿疹が持続する場合があります。

アトピー性皮膚炎イメージ

アトピー性皮膚炎の
仕組み

アトピー性皮膚炎の仕組み

アトピー性皮膚炎では、細胞間脂質のセラミドが不足して皮膚のバリア機能が低下しています。
そのため様々な抗原(アレルゲン)や細菌、刺激物質などが皮膚の中に入り込みやすくなり、それらが炎症細胞を活性化して皮膚炎やかゆみを引き起こしていると考えられています。
皮膚のバリア障害、炎症、かゆみの3つの要素がお互いに関連しながら病態に関与している三位一体説が提唱されています。

治療TREATMENT

日本皮膚科学会のガイドラインでは、治療目標(ゴール)を「症状がないか、あっても軽微で、日常生活に支障がなく、薬物療法もあまり必要としない状態に到達し、それを維持すること」とあります。

  • 薬物療法
  • 皮膚の生理学的異常に対するスキンケア
  • 悪化因子の検索と対策

が基本となります。

1薬物療法

外用療法が基本となります。ステロイド軟膏を基本として炎症を抑えていきます。
ステロイド軟膏は個々の皮疹の重症度に応じてランクを選択し、病変の正常や部位によって剤形を使い分け、炎症を十分に抑制していきます。ポイントとしてはたっぷり塗る、でも患部にはすり込まないこと、途中で止めないことです。
そして炎症が落ち着いてきたら保湿剤やタクロリムス軟膏、デルゴシチニブ軟膏、ジファミラスト軟膏などを組み合わせて、寛解状態を維持していきます。

薬物療法
2皮膚の生理学的異常に対するスキンケア

アトピー性皮膚炎では皮膚のバリア機能の低下と保湿因子の不足が認められます。保湿剤を使用することでそれらを改善させることができます。また皮脂汚れや汗などは皮疹を悪化させる要因となるので、入浴、シャワー浴をできるだけ行いましょう。

皮膚の生理学的異常に対するスキンケア
3悪化因子の検索と対策

汗や髪の毛などは悪化因子となります。また衣類も羊毛素材やゴワゴワした素材のものは皮疹を悪化させます。皮疹の存在している部位から悪化因子が想定できる場合には、できるだけ取り除くようにしましょう。

悪化因子の検索と対策

アトピー性皮膚炎に
関するトピックTOPIC

アトピー性皮膚炎の
新しい治療

近年アトピー性皮膚炎はその病態がかなりわかってきており、それに伴って様々な新しい治療薬が出てきています。

注射薬

生物学的製剤は、サイトカインと呼ばれる物質が受容体に結合するのを妨げて効果を発揮します。アトピー性皮膚炎の炎症反応に関与するサイトカインの働きを抑えるデュピルマブ(デュピクセント®)レブリキズマブ(イブグリース®)と、かゆみに関与するサイトカインの働きを抑えるネモリズマブ(ミチーガ®)があり、当院での使用も可能です。

いずれも注射薬であること、前治療要件がいろいろあるのですぐには使用できないこと、また高額であることが難点ですが、副作用も比較的少なく非常に有力な薬剤と考えます。

注射薬イメージ
効果・効能 開始可能年齢 投与間隔 副作用 メリット デメリット
デュピルマブ
(デュピクセント®)
湿疹、かゆみを
抑える
生後6ヶ月以上 2週間に1度 結膜炎など 自己注射可能 2週間隔に
注射が必要
レブリキズマブ
(イブグリース®)
湿疹、かゆみを
抑える
12歳以上かつ
体重40㎏以上
2週間に1度 結膜炎など 経過次第で月に
1度の注射でOK
現段階では自己
注射ができない
ネモリズマブ
(ミチーガ®)
かゆみを強力に
抑える
6歳以上 月に1度 浮腫性紅斑など 非常に短期間で
かゆみが治まる
湿疹は
治まらない

内服薬

JAK阻害薬は、サイトカインが細胞膜にある受容体と結合し、そのシグナルが細胞内を伝わっていくことを阻害することで効果を発揮する薬剤です。バリシチニブ(オルミエント®)ウパダシチニブ(リンヴォック®)アブロシチニブ(サイバインコ®)があり、こちらも当院での使用が可能です。

内服薬で服薬が簡単であること、症状に応じて内服量を変えたり、中断したりすることも可能です。投与に当たって年齢制限や、前治療要件などがいろいろあるのですぐには使用できないこと、また高額であることに加え、免疫機能を広範囲に抑えることから、投与前には結核や肝炎を除外するための血液検査やレントゲン検査が必須で、投与後も定期的な検査が必要になります。

内服薬イメージ
効果・効能 開始可能年齢 副作用 メリット デメリット
バリシチニブ
(オルミエント®)
湿疹、かゆみを
抑える
2歳以上 感染症、ニキビ 円形脱毛症にも
効果あり、副作用が
比較的少ない
効果が穏やか
ウパダシチニブ
(リンヴォック®)
湿疹、かゆみを
強力に抑える
12歳以上かつ
体重30㎏以上
感染症、ニキビ 非常に効果が強い 感染症の副作用が
比較的多い
アブロシチニブ
(サイバインコ®)
湿疹、かゆみを
抑える
12歳以上 感染症、胃腸障害、
頭痛
アトピー専用薬 開始初期に
胃腸障害が多い

外用薬

外用剤においても、近年JAK阻害外用剤であるデルゴシチニブ軟膏(コレクチム軟膏®)ジファミラスト軟膏(モイゼルト軟膏®)が発売になりました。
いずれもステロイドよりは抗炎症作用が弱いものの、ステロイド軟膏が持つ皮膚を薄くしたり、眼圧をあげたりする副作用がないため、顔面を含め症状に応じて使い分けができるようになってきています。

外用薬イメージ